横顔

わたしたち、もっと、わかりあえたね

煙になった姿を見上げて思う。お焼香の匂いが制服に張り付いている。きみがすきだったもの、わたしそんなに知らない。きらいなものの話しかしなかった。きみは嫌っていたけど制服のワイシャツはよく似合っていたよ。薄っぺらい肩が透けて見えて、半袖から伸びる腕の血管の生々しさを、よく覚えている。でもいつか忘れるよ。しょうがないよね。組み敷かれた重みはあっけなく灰になって、わたしの手元には残らない。きみは男らしさとか女らしさとかいう言葉を嫌っていたけれど、髪をすくわれて、腿を撫でられて、下半身が熱くなったわたしは、そのとき、女であると確かに思った。踏みにじられるように思い知らされた。わたしはきみのことなんにもわからないと思った。考えてること、仕草、むかしのこと。でも、もう限界だっただろうきみのこと、きみのしたこと、なにも残さなかったことを思うと

わたしたち、もっと、わかりあえたね、ってきみの嫌いそうな言葉を、ほんきで思って、きみを死姦する。