きみへ

助けてください、と書かれたノートの切れ端がぼくの机に入っていた。細く弱々しい字は読むだけで、ぽきりと折れてしまいそうな気がして恐ろしかった。なんだか、こちらまで心細くなってきた。だれが入れたのだろう。昼休みの騒がしい教室を細目で見渡す。女子は小さな輪を、それぞれ作って、目配せし合いながら笑っている。男子は教室なのにサッカーボールを蹴っていたり、机にどかりと座って、喉の奥が見えることを恐れもせず笑っていたりする。突然、なにかが背中にぶつかってきた衝撃ですこしよろける。大きな笑い声とひとりでいるぼくを罵る声が耳に響いた。サッカーボールが足元に転がる。五年生になって、声が出しにくくなって、関節が痛むようになった。それがなんだっていうんだと思う。こんな惨めなまま大人になっていくのなら、今すぐ消滅したかった。メモをポケットの底に押し込む。きみもどこかでぼくを見ているんだろう。なんの救いもない世界で、助けてくださいとぼくに言った誰かがいる。どうかきみが汚れた明日を迎えられることを切に願う。