裸の爪

なにも

書けないのに

なにかを書きたがっている


しねばいいのに、と繰り返すたびに

なにかが本当に死んでしまった


変わらないでいてね、そのままでいてね

過去を撫でつけて爪をたてる

むかしの匂いが消えていく

信号機が変わる

踏切の音が鳴る

曇り空は青みがかったグレーだった

そんな記憶はあったっけ?


なにかを殺して、生まれてくるものを

祝福するくらいの図太さと覚悟が

わたしにはある


許されるために書いてるんじゃない